利用事例
材料科学

機能ガラスの構造解析

原子炉から発生する放射性廃棄物は溶融ガラスとともに固化されガラス固化体として地層処分されます。処分場を確保することが難しいことから、ガラス固化体の発生量を少なくすることが求められています。放射性廃棄物ガラスのベースとして用いられるホウケイ酸ガラスをケイ酸塩ガラスに単純化してVおよびMoを添加したものとしない組成でガラスを作製しNMR測定に用いました。29Si固体NMR測定から、ケイ酸塩ガラスは、V2O5を添加することでQ4構造が増加すること、V2O5添加、MoO3添加いずれもケイ酸塩ガラスの架橋構造を変化させることが確認できました。

ガラスやセメント等の無機材料の固体NMR解析は最も活発に利用されている分野の一つです。


共用事業での成果
 
 
生命科学

タンパク質調製(パイプライン)

変異体作成

指定された変異体タンパク質の作成・発現・可溶性の確認と、希望により試料を提供します(1)。多数の試料(一度に最大96種)が迅速に調製できるため、構造スクリーニングの用途のほか、高機能化されたタンパク質の創出・産業利用などへの展開も期待できます(2)。基質特異性の変換、安定性の向上(耐熱性、可溶性、酸性での耐性)、蛍光レポータータンパク質では蛍光特性の改良などの例が知られています。「発現確認」のメニューで利用可能です。

安定同位体標識

NMR法では選択的に安定同位体標識することで、分子の中で見たい部分だけを選択的にみることができます。パイプライン独自の無細胞タンパク質合成法は、生きた細胞では実現が難しい高度な安定同位体標識が可能で、その標識技術は今も進化を続けています。これまでは観測が難しかった大きな分子や不安定な分子でも、洗練された標識により迅速に解析できるようになってきています。「フオールド判定」「大量調製」のメニューで利用可能です。

 
 
化学

フッ素含有化合物

水素に次いでVDW半径が小さいフッ素は導入による分子構造の大きな変化は起こらないが、C-F結合が安定であること、フッ素導入による疎水性の向上など、大きな効果をもたらす。一方で、19FはNMRにとっても扱いやすい核種であり、水素に次ぐ高い共鳴周波数と100%の天然存在比、スピン1/2により高感度で測定することが可能です。理研NMR研究基盤では、19Fを測定できる装置を2種類有しており、高感度・高分解能の900MHz、1Hデカップリングにより多様な測定が可能な600MHzの2種類があります。

19F{1H} NMR, 19F-1H HOESY, 19F-13C HSQCなど

過去には、19Fを含む医薬品スクリーニング、フッ素含有ポリマーの構造解析などに利用されています。

 
 
創薬・健康医療

タンパク質やRNAと化合物の相互作用

タンパク質やRNAと化合物の相互作用解析は、NMRならではメリットがあります。NMRは原子レベルの分解能で分析を行う手法なので、タンパク質の構造や化合物の構造に関する情報が得られます。化合物のスクリーニング、相互作用部位の特定、相互作用による分子構造の変化、あるいは複合体の構造解析と、様々なアプローチが考えられますが、それぞれに準備すべき試料が異なり、またNMR測定難易度、測定時間や解析方法が異なりますので、専門家に相談してください。

 
 
ポリマー

ポリマーの高温測定

ゴミ袋やレジ袋に使われることの多い低密度ポリエチレン(LDPE)は、100℃以上の高温にすることで、溶媒に溶解することが可能です。均一な溶解状態になれば高分解能の溶液NMRで構造解析が可能になります。分岐構造や末端構造の解析のノウハウを有しています。


 
 
天然物

天然物の極微量構造解析

スジキレボヤSAAFの試料量が10μgと極微量でしたが、600MHzクライオプローブで1H-13C HSQCですべての信号を確認することができ、HMBCではメチル基からの相関をとることができました。解析の結果、推定構造が正しいことが確認できました。また、ステロイド骨格の信号も帰属ができたので、ステロイド部分の立体化学も決定することができました。

RFコイル部分を低温にすることで熱雑音を減らし、通常のNMRプローブよりも高感度で測定することができます。


共用事業での成果
 
 
生命科学

タンパク質や核酸などの生体高分子と化合物の相互作用解析

様々なレベルの相互作用解析がありますが、簡単なものから紹介します。

1H一次元測定

化合物とターゲットを混合したときに化合物のNMR信号の変化をモニターする方法です。これは一次元NMRを測定するだけなので、短時間で大量の化合物をスクリーニングできます。標準的な条件で、1サンプル数分

STDまたはwaterLOGSY

NMRらしい測定として、STDやwaterLOGSY測定があります。こちらはターゲットや水にRFを照射することで、化合物の相互作用をしている水素のに変化が現れる方法で、結合様式について原子レベルの分解能で調べることができます。こちらも一次元NMR測定が基本ですが、少し感度が劣るので積算を必要とします。標準的な条件で、1サンプル数分から1時間程度

化学シフト摂動法

ターゲットのタンパク質や核酸のNMR信号が帰属できている場合に、化合物を混合することでこれらの信号が変化することを一次元や二次元スペクトルでモニターします。帰属情報がありますので、タンパク質や核酸のどの部位に結合しているのか、より詳細に解析できます。ただし、帰属が必要になりますので、多くの場合で13C/15N同位体標識が必要になります。NMR立体構造解析パイプラインでは、タンパク質の同位体標識からNMR信号解析まで支援しています。信号の帰属情報を得るためには、条件が良い場合で1日から1週間程度のNMR測定時間を要します。帰属情報が得られれば、スクリーニング測定は、1サンプル数十分から1時間程度

複合体立体構造解析

最も難易度が高い方法ですが、NMRで立体構造解析を行うことが可能です。試料はターゲットの生体高分子の帰属を行うため、同位体標識が必要になります。化合物は標識無しで問題ありません。この場合、生体高分子のNMR構造解析のためのNMR測定に1カ月以上必要で、構造解析も相当な時間を要します。難易度は非常に高くなります。X線結晶構造解析やクライオ電子顕微鏡と組み合わせた解析が有効です。

 
 
ポリマー

ポリマーの分岐構造、末端構造

分岐構造、末端構造の信号帰属には、多次元NMRを組み合わせ、複数の構造標品と目的試料に対して数週間のNMR測定とデータ解析が必要になります。からの信号は主鎖信号の近くに非常に弱く出現することが多いです。高磁場NMR、高感度プローブ二より解決できる場合があります。

ひとたび構造解析が済んでNMR信号の帰属情報が得られると、ここからは製品のマイナー構造の分析、定量解析などが容易にできるようになります。この場合は、1Hの一次元測定をだけになるので、ルーチン測定で多検体の分析が可能になります。

過去には、PET、POM、PE、PMMAなど末端、局所構造の解析に当施設の装置が利用されています。


 
 
化学

製品や原材料の品質管理

定量NMR(qNMR)はJIS規格でも規定される手法で、他の定量分析手法で必要になる標品を必要としないことが特徴です。特に、製品に含まれる不純物を定量する場合、主成分の信号に対して比をとる相対的な分析法であれば、比較的容易に分析可能です。JIS規格に沿った推奨測定も可能ですが、定量精度や試料の特性に合わせて、T1緩和とフリップ角を最適化した測定方法をご提案できます。

一般に、0.1%程度の定量精度が見込めます。熟練したサンプル準備や統計的なデータ分析が必要になりますが、これ以上の定量精度で分析できている報告もあります。

JIS K 0138 定量核磁気共鳴分光法通則(qNMR通則)


 
 
創薬・健康医療

象牙有機物と歯科素材の相互作用解析

象牙質に含まれる有機質(コラーゲン)と歯科有用素材の相互作用解析をSTD法を用いて行った結果、特定のフラボノイドとの相互作用を確認できました。この結果は、高齢社会の口腔衛生で増加が懸念されている残存歯の根元の虫歯(根面う蝕)に対応した商品開発や予防方法の確立が期待でき、高齢社会における口腔衛生の充実につながると考えられます。

STD法は、NMRで用いられる相互作用解析では最も単純で、結果は原子レベルでの相互作用部位の特定も可能です。測定時間も数分から1時間程度で行うことが通常で、多量の化合物のスクリーニングに向いています。


共用事業での成果
 
 
材料科学

リチウムイオン電池の材料開発

正極、負極合材の固体NMRスペクトルを測定することで、リチウムイオン二次電池の電極組成や充放電機構を明らかにし、高容量化や信頼性改善指針を得ることを目的に、700MHz固体NMR装置を利用しました。結果、7Li核等の多核固体NMRスペクトルから各原子における局所構造や結晶性に関する情報が得られ、微小な構造や結晶性の変化が本材料の電気化学的性質と密接に関係しているとの結果を得られました。また、活物質に含まれるLiイオンと帰属されるシグナルが確認でき、これは担持体カーボンの共存下においても、全くその化学シフト値に影響を受けないことが明らかになりました。これは、今後の本電池の7Li-NMRによる評価において、ベースとなる重要な知見になりました。

他にも多数のリチウムイオン電池の関連材料のNMR測定・解析の経験があります。


共用事業での成果
 
 
創薬・健康医療

生薬の多成分網羅的な評価

チョウトウコウの品質安定化を目的として、NMRを用いた多成分網羅的な品質評価方法を確立しました。NMRを用いたチョウトウコウの成分網羅的な品質評価において、糖類由来のシグナルが主として検出されることを確認し、合わせてチョウトウコウの薬効成分として知られるアルカロイド由来のシグナルも得ることができました。1H-NMRデータについて主成分分析により、第三主成分について解析を進めた結果、基原種、産地及び部位ごとの特徴を把握することが出来た。NMRのメリットとして、HPLC及びLC/MS/MSでは検出が困難な糖類をはじめとする一次代謝産物の含有情報を得られることが挙げられます。一方、生薬が持つ特徴的な成分(二次代謝産物)を用いた評価をするには、抽出溶媒種の選択、前処理を含めた抽出方法の最適化によって解析可能なデータが得られることが明らかとなりました。

HPLCや質量分析などで用いられる主成分分析(多変量解析)は、NMRでも行うことができます。HPLCとは異なりUV吸収が無くても、NMRでは1H(NMRで観測可能な核)があればすべて検出することができることがとky超です。


共用事業での成果
 
 
ポリマー

樹脂材料と添加剤の結合状態

建築部材(浴室・洗面・サッシなど)の樹脂材料の高機能化のためには、製品表面に機能化添加剤成分を長期安定的に付着させる事が重要です。添加剤の硬化状態および樹脂材料との結合状態を、NMRによって構造解析を試み、機能性樹脂材料の材料設計の最適化に繋げていく事を目的しました。樹脂表面へ機能性添加剤の密着・耐久性を向上させる有力候補のシラン系カップリング剤の反応状態を29Si-NMRで検出できました。また、シラン系カップリング剤処理した樹脂に構造変化が無いかを確認できました。

溶解や抽出の必要のない固体NMRでは製品状態の構造解析を行うことができます。理化学研究所NMR研究基盤では多様な固体NMR装置を用意して、様々な課題解決に取り組んでいます。


共用事業での成果
 
 
材料科学

蛍光体の構造解析

白色LED の発光特性は使用する蛍光体そのものの発光特性に大きく依存することが知られており、固体NMR を用いた構造解析で原子間の相互作用の影響を詳細に反映した構造情報を得ることにより、蛍光体の特性改善につなげることを目的としました。蛍光体の配位構造は複雑であり、配位対称性が低く核四極子相互作用が大きいため、高磁場化による高分解能化の効果は極めて高く、当初期待した以上の分離能が得られました。

理化学研究所NMR研究基盤では、1H共鳴周波数で900MHz(21.4T)のNMRでも四極子核の測定が可能となっています。この装置では、四極子核の構造解析の多くの課題で利用されています。


共用事業での成果
 
 
ポリマー

樹脂の劣化構造解析

合成樹脂は金属や無機材料にない特徴を有し、今日の工業製品にはなくてはならないものとなっています。合成樹脂の最大の欠点は、環境や薬品等による劣化を受けやすいことであり、劣化の理解は必要不可欠です。ところが、従来の方法で僅かな劣化に起因する構造の違いを見分けることは困難でした。そこで今回、固体高分解能NMR測定により、ポリイミド樹脂の劣化初期の構造変化を明らかにすることを目的としました。今回の一連の測定で、13C-CPMAS 測定において、アルカリ劣化品でイミド基が開裂していることを示唆するスペクトルの変化を確認することができました。また、熱劣化品でも初期品とはスペクトルが変化することを確認できました。

固体NMRでは前処理をすることなく、様々な劣化状態の構造解析を行うことができます。他にも複数の樹脂関連材料の劣化NMR測定・解析の経験があります。


共用事業での成果
 
 
材料科学

ゲル化剤の構造と機能解析

デキストリンの脂肪酸エステルは化粧品用オイルのゲル化剤として用いられています。溶液NMRを用いたエステル化部位の特定することができ、構造によるゲル化能力の差が明らかになりました。また、固体NMRを用いたゲル化剤の温度依存的な構造変化から、アルキル鎖の結晶化がゲルのマトリックス構造に寄与していることが明らかになりました。

NMR研究基盤では多様なNMR装置を取り揃えております。溶液NMRで化学構造を解析し、固体NMRで高次構造や物性評価を行うことが可能です。


共用事業での成果